この記事は約5分で読めます。
こんにちは! FUNLOGYの山川です。
先日の記事【スピーカーのchはどんな意味?サラウンドとウーファー・ツイーターについても解説】はお楽しみいただけましたでしょうか?今回も引き続き、スピーカー選びに役立つ用語のお話をしていきたいと思います。
スピーカーを選ぶ際には、商品のスペック表などをチェックしますよね。その際、スペック表に必ず表記されているものの一つが、インピーダンスという数値です。
スピーカーを比較する上で必要な要素であるにも関わらず、このインピーダンスについて、しっかり理解している人は少ないのではないでしょうか。また、「SN比」「入力感度」「ディストーション」といった要素も含めるとますます混乱してしまうことと思います。
本日の記事では、「インピーダンス」という言葉を始め、「SN比」「入力感度」「ディストーション」といったスピーカーを比較する際に表記されるスペックの項目について、その意味を解説します。
インピーダンスとは?
スピーカーのインピーダンスとは電気抵抗のことで、Ω(オーム)という単位で表します。この数字が大きいほど電圧が高く取れ、効率的に電力を送ることができます。
しかし、インピーダンスを上げることでノイズを拾いやすくなるという特性があります。そのため、単純にインピーダンスが高ければ良いというわけではありません。
インピーダンスを理解するには川の流れをイメージするといいかもしれません。例えば、インピーダンスが高い状態は川の幅が狭く、少ない水量でも勢い良く水が流れていきます。しかし、狭い川幅に石のようなノイズが投げ込まれると、川全体に影響が出てしまいます。
逆に、インピーダンスの低い状態は川幅の広い流れで、多くの水量が必要ですが、ノイズとなる多少の石があってもその流れに影響は出ません。
ここまで聞くと、インピーダンスが音質に与える影響はとても大きいように感じますね。しかし、実際には耳で聞き分けられるほどの音質の違いは現れません。つまり音質を重視する場合には、インピーダンスの数値を特別気にする必要はないということになります。
では、なぜスペック表には必ずと言っていいほど、インピーダンスの表記がされているのでしょうか?それは、アンプからスピーカーといった接続をした際に、効率的に信号を伝達するための指標となるからです。
最も効率的に信号を伝達するためには、出力側と入力側のインピーダンスが一致する必要があります。これを「インピーダンス・マッチング」といいます。
インピーダンス・マッチングとは
出力側と入力側のインピーダンスが一致している状態を「インピーダンス・マッチング」と呼び、インピーダンス・マッチングが行われている場合というのは、音の信号が最も効率よく送られています。原則として、「出力側のインピーダンス<入力側のインピーダンス」となるようにするのがよいとされ、この状態を「ロー出しハイ受け」と呼ぶこともあります。
逆に「出力側のインピーダンス>入力側のインピーダンス」となってしまった場合には、高音が欠損し、こもった印象の音になる場合があります。蛇口から出す水の量が、受け取るコップの大きさより大きいと水が溢れてしまう状態とイメージするといいかもしれません。
このため、インピーダンスを選ぶ際には、アンプとスピーカーのように接続する機器同士のインピーダンスを比較する必要があります。
SN比とは?
SN比とは、信号(Signal)とノイズ(Noise)の比率のことで、SN比の数値が大きいほどノイズが小さいことを表します。かつてのオーディオでは録音の際にもノイズが発生しやすく、ノイズが小さいことが重要視されましたが、現代のオーディオにおいてはノイズレベルにほとんど差はなく、出力の大きなモデルがSN比も高い値になっている場合が多いです。
SN比は「(最大信号が出力されたときの電力)÷(信号が出力されていないときの電力)」で求められます。アンプで言えば「最大信号が出力されたとき」というのは、最大音量の状態で、「信号が出力されていないとき」とは音のない状態を指します。この無音の状態で「サー」というようなノイズが聞こえるときは、SN比が低いということになります。
一般的にはSN比の高いものを選ぶのが良いとされていますが、ノイズの計測環境によって高めに表示されている製品もあります。SN比が高いから良いという考え方は、あまりオススメできません。
入力感度とは?
スピーカーを利用する際には、通常「プリアンプ」側の音量調整によってボリュームを変更しますが、「パワーアンプ」側にもこの音量調整のようなボリュームが付いていることがあります。
このツマミは「入力感度」というものを設定するもので、プリアンプとパワーアンプのバランスをとるために設計されているものです。
プリアンプとは
プリアンプは、CDやレコードからの信号を左右のスピーカーへバランス調整するといった機能があります。日本語に訳すと「前置増幅器」と言われ、音源となるCDやレコードなどのソースを選択し、スピーカーの左右に音量や音質を振り分けるといった調整の機能をもっているものです。
パワーアンプとは
パワーアンプは、プリアンプから送られてくる信号を増幅させる役割があります。プリアンプからの信号はスピーカーで聞ける音量にはなっていないため、パワーアンプによって音量を増幅します。このため、スピーカーまでの接続は「音源→プリアンプ→パワーアンプ→スピーカー」という順番になります。
アンプを内蔵したスピーカーも販売されている
こうしたアンプの設置には「コストがかかる」「設置場所がない」などの声も多いという理由から、アンプの機能を内蔵したスピーカーも販売されています。スピーカー自体に、音量を調節するツマミが搭載されているものを見たことがないでしょうか?あれがアンプを内蔵したスピーカーです。
アンプを内蔵したスピーカーは、安価で便利であるというメリットの反面、音質などの調整を細かくできないというデメリットがあります。
アンプを利用することでできる入力感度の設定
アンプを利用するメリットは、細かな設定の一つとして入力感度を設定できるという点があります。この入力感度はプリアンプとパワーアンプのバランスをとるためのもので、プリアンプからの信号が大きすぎると、パワーアンプを通すことで不快なほど大音量になってしまったり、ノイズが大きくなってしまったりといった弊害が起きます。
そのため、パワーアンプの入力感度を下げることでプリアンプから受け取る信号の割合を減らすことができます。逆にプリアンプからの信号が小さい場合には、入力感度を上げることで適切な音量でスピーカーから聞くことができます。
ディストーションとは?
ここまでは、アンプやスピーカーの設定によって、ノイズをいかに少なくするかということを解説しました。
ところが逆に、このノイズを生かして音楽の一部にする「ディストーション」という演奏がロックなどのジャンルでは存在します。
ディストーションとは、音源に含まれない音がスピーカーに出力される場合に発生する音の歪み(ひずみ)です。一般的にはこの歪みはノイズとして分類されますが、ロックギターなどに接続するスピーカーでは、この歪みを利用したものも存在します。
ロックなどの音楽で、ギターが「ジャーン!」となっているのを聞いたことがあると思いますが、これはギターにつないだアンプのボリュームを最大まであげた際に生じる歪みを生かした音質です。現在ではなんと、この歪みの音を擬似的に再現するための機能を搭載したスピーカーもあります。
ディストーション機能付きのスピーカー
現代のミュージシャンがディストーションの音を使う場合には、一般的にはエフェクターと呼ばれる装置をスピーカーとの間に接続します。
いかがでしたか?スピーカーのスペック表などに記載されるさまざまなオーディオ用語について理解できたと思います。最適な数値である商品を選んで、最善の音楽環境にしましょう。
次回もお楽しみいただけましたら幸いです。
よろしくお願いします!
FUNLOGY
山川
―――――――
▼次回