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こんにちは、FUNLOGYの山川です。

前回の記事【ハイレゾとは?対応している機器の調べ方と種類について解説】はお楽しみいただけましたでしょうか?
今回も引き続き、スピーカーに関するお話をしていきたいと思います。


スピーカーを選ぶ上で、様々な材質によって作られたスピーカーの中から自分の好みのものを選ぶには、どうすればいいか迷っている方も多いのではないでしょうか。


中でもスピーカーの見た目を大きく左右するのが、その材質です。

ぬくもりを感じる木製のスピーカー

ぬくもりを感じる木製なのか、スマートな印象のプラスチック製なのか?材質次第で、スピーカーが持つ雰囲気はかなり変わってきますよね。


さらに、スピーカーの材質によって、音質にはどのような変化があるのでしょうか?また、スピーカーを構成している内部の様々な部品も、材質によって音質が変わるのでしょうか?


この記事ではそんな、スピーカーの材質に関する様々な疑問について説明します。

スピーカーを構成する部品


スピーカー
スピーカーを構成する部品には多くのものがありますが、主な部品はエンクロージャーコーン、そしてマグネットコイルといったものになります。


マグネットやコイルには金属しか使用できませんが、エンクロージャーの多くは木材など様々な素材で作られており、またコーンにも多様な種類の素材が使われる場合があります。


今回は、このエンクロージャーとコーンの材質による変化をそれぞれ説明します。


1.エンクロージャー(筐体)の役割


エンクロージャーはスピーカーの顔とも言える部分で、主に木材で作られた筐体のことを言います。スピーカーの外側の部分ですね。


エンクロージャーの構造は様々な種類があり、内部の構造が複雑になっているスピーカーもあります。そのため加工がしやすく、かつ丈夫である木材が昔からよく使用されてきました。


エンクロージャーの役割は、コーンから発生する逆向きの音を打ち消すことで正しい音の発声をするというものです。
 

2.コーン(振動板)の役割


スピーカーに使用される部品・コーン
コーンはスピーカーに使われる振動板のことで、主に円錐状の形をしています。スピーカーユニットから出力する周波数によって大きさが異なり、小さいもので5cm、大きいもので40cmほどのものまであります。


コーンの役割は、コイルで発生した磁力を振動に変えて、周囲の空気を振動させて音にするというものです。

スピーカーに使用される材質による変化


それではエンクロージャーとコーンに用いられる素材の、材質による音への影響はどのようなものなのかを説明します。

 

エンクロージャーに使用される素材

エンクロージャーの主な素材である木

エンクロージャーに使用される素材は主に木材です。
一口に木材と言っても様々な種類や産地のものがあり、また加工や仕上げによっても見た目や音質に変化があります。


素材の目的


エンクロージャーの素材に求められるものは、反響性剛性制振性です。それぞれの要素について説明します。


1.反響性


反響性は、木材を始めとした素材が持つ音の、響きや音の広がりを感じられることです。素材によって音の反響の仕方が変わることで、スピーカーから聞こえる音も変わります。

特に木材が持つ音の響きは、昔から人の耳に心地よい反響であることから「ぬくもりのある音」のような表現がされてきました。

木製のスピーカー


2.剛性


スピーカーは特性上常に振動しているため、その振動に耐えるための強度が必要です。振動によってエンクロージャー内の構造が変化してしまうと、聞こえる音も変化してしまいます。


この変化を エイジング と言い、変化することで音が聞きやすくなるという人もいます。
しかし一般的には、メーカーが意図している最高の音を表現できている状態が変化しないことが良いでしょう。


3.制振性


スピーカーは振動によって音を出しているので、エンクロージャーも同時に振動しています。筐体が振動してしまうことで、余計なノイズが発生してしまうので、素材によってこの振動をどれだけ抑えられるかは重要です。

また、エンクロージャーと接地面の間にインシュレーターという素材を挟むことでこの振動を低減する方法もあります。


素材の種類


エンクロージャーに使われる素材は主に木材です。木材と一括りにしましたが、この木材の中でも素材によって音に与える影響は変わります。
よく使用される木材としてはマホガニー、メープル、ローズウッド、ウォールナット、アルダーなどが挙げられます。

そのほかには、樹脂(プラスチック)ガラス金属ダンボールなどで作られることもあります。どのような素材にしても、内部の共振をいかに減らせるかということが重要になります。

素材の特徴


エンクロージャーによく使われる木材の種類と、それぞれの特徴は以下の通りです。

エンクロージャーに使用される木材の特徴チャート


1.マホガニー材


楽器などにも多用され、見た目の美しさや軽量性に優れた素材です。木目が均一で赤茶色をしているため、家具にしても高級な印象になります。適度な柔らかさのある材質なので、柔らかく広がる音の響きがあります。


2.アルダー材


特性に偏りがなくバランスのいい素材です。手に入りやすく加工も簡単で、広く普及しており、安価に入手できます。

3.アッシュ材


アッシュ材はアルダー材よりも剛性が高く、うねるような木目が特徴です。木目の感触を生かした仕上げや塗装をすることもあります。

 

4.ローズウッド材


日本では紫壇と呼ばれる木材で、非常に頑丈かつ重い素材です。高級な家具などにも使われる反面、高価なためスピーカーでは化粧板のみに使うといった傾向があります。

 

5.その他の素材


木材以外にも、強化樹脂(プラスチック)や金属といった素材でエンクロージャーを構成しているスピーカーもあります。木材よりも剛性が高く、かつ制振性の高い素材もあります。
一方で広く普及しているものが少ないので、高価になりやすいという傾向もあります。

 

コーンに使用される素材

コーンに使用される主な素材である紙
コーンに使用される素材は主にです。コーンは高音域を再生するにはより小さく低音域を再生するにはより大きいほうが良いとされています。
そのためスピーカーの高音を担当するツイーターなどのコーンは小さく、低音を担当するウーファーなどのコーンは大きく作られています。

それぞれ出力する音域によって求められる要素が変わるため、ツイーターのコーンの素材とウーファーのコーンの素材も同じである必要はありません。
では、どのような目的がコーンには求められるのでしょうか。


素材の目的


コーンの素材に求められるものは、軽量性剛性音の損失性です。それぞれの性質について説明します。


1.軽量性


軽量性はコーンにとって最も重要な要素で、コイルからの振動をより高い再現性で伝えられるかに関わります。後述する音の損失性にも関わるため、コーンは軽量であるほど優れているといえます。


2.剛性


軽量性と反する要素として挙げられるのが、剛性です。特に紙製のコーンは劣化しやすく、歪みが発生してしまう場合や、穴や凹みが生じてしまう可能性もあります。


3.音の損失性


音の損失性とは、再生する音が停止した際にコーンの振動もピッタリ止まるかどうかという点です。


先述したように、コーンはコイルからの力で振動をしています。この振動の動きにも慣性の法則が働いていて、コイルからの力が止まったあともしばらく振動しています。


この振動が長く続いてしまうと、音と音の継ぎ目が曖昧になってぼんやりとした音像になってしまったり、残響音の多い音になってしまったりする可能性があります。


音の損失性を高めるためには、共振のしにくい素材でかつ軽量である必要があります。ここにもコーンの軽量性の重要さが影響しています。


素材の種類


コーンに使われる素材は昔からが主流でした。円錐形という特殊な形に加工しやすく、軽量であることから重宝されました。

コーンの素材の種類は紙以外にもアルミチタンなどの金属やポリプロピレンケブラなどの樹脂製の素材が用いられています。

最近では木製のコーンが開発され、軽量性と剛性を兼ね備えた新しい素材として注目されています。


素材の特徴


紙製のコーンは軽量で加工がしやすく、安価に作ることができます。昔から使われてきた理由も、価格の手軽さと加工のしやすさにあります。


金属製のコーン
剛性が高く、薄く軽量です。一方で共振性が高いため、音の損失性があまり高くありません。また加工の難しさから、比較的高価になりやすい傾向にあります。


樹脂製のコーン
は共振性が低く、音の損失性が高いため、歪みの少ないはっきりとした音が聞こえやすいです。紙や金属とは逆に重量が重くなりやすいので、ウーファーなどの大きいスピーカーユニットに使用される場合が多いです。

素材の特性を知ってスピーカー選びを楽しもう!

リビングでくつろいでいる人

いかがでしたか?スピーカーに使われる素材と素材が音などに与える影響について理解できたと思います。
自宅の環境にあった最適なスピーカーを選んでより良い音楽鑑賞をお楽しみください。

それでは、次回もどうぞよろしくお願いいたします。


FUNLOGY

2 コメント

コメント(2件)

[FunLogy]カナ

N.Yasuda様>
コメントありがとうございます。
スピーカーが本当にお好きなんですね!とても興味深いお話を聞けて面白かったです。
今後この記事をご覧いただいた方にとっても、きっと参考にしていただける内容ではないかと思います。
専門的なコメント、本当にありがとうございました。

カナ

N.Yasuda

はじめまして、一つお話させて下さい。
1. スピーカーの箱について: 現在、多くのメーカー製のスピーカーの箱ではほぼ90%以上で
MDFと云う木材繊維を合成接着剤で固めた板を使用しています。
箱の外面仕上げにはビニールに木目等を印刷したものを使用しています。
高級品は天然木の薄く削いだ突板を使用している場合や、箱の素材に合板や集成材を用いた物も有ります。
また、20年以上前はMDFよりも木材繊維の荒いチップボードを用いた箱も多かった様です。
箱の後ろ側が仕上げ貼りされていないもので側板の小口にザラザラな穴が沢山開いている物はチップボードの類です。
チップボードは水分や湿度で劣化してボロボロになりますが、MDFはより緻密で切り口もツルツルしています。
でも、水分や湿度で劣化するので乾燥した状態で使用するのがBestです。
箱の材質にこだわって合板や集成材や単板やその張り合わせで作成するのは自作の醍醐味だと思います。
また、箱の構造を色々工夫して希望する音を創るのも自作にしかできない楽しみ方で
欧米のマニアの作品は素晴らしい物が有って参考になります。

2. コーン材質について
コーン材質は強度と減衰特性による影響が音質を左右します。
・紙製は製法や厚みやコルゲーション等のリブ構造や仕上げの樹脂強化法(含浸や表面塗装など)によって強度や音質が大きく変わります。
個人的には見た目や高剛性と分割振動の制御や素直な音質から、コルゲーションを沢山付けたコーンが魅力的です。大型のPA用ウーハー等に多用されています。
・樹脂製は主にPP樹脂が使われますが、紙と同等の曲げ強度(破壊強度は紙より相当大きいです)で減衰は紙の倍程度の素材です。
共振の少なさから音質は素直ですが、強度は今一で凡庸な感じです。
インジェクション等の熱成型で造られる為コルゲーション等の無い平面的な形状です。
・樹脂を高速にインジェクションすることで分子配列を強制強化する液晶プラスチックを用いたものがあります。
強度はPPの数倍でカーボン繊維強化樹脂に近いですが、整形方向以外の円周方向はPPよりも破壊強度が劣るので割れていることが有ります。ダイヤトーンのウーハーコーンに観られます。
・PP樹脂でも、色々な粉などの成分を混入している物は同じ様に割れが発生している物が多いようです。YAMAHA製のコーンに観られます。
・カーボン繊維やアラミド繊維やガラス繊維などの高強度繊維の布を複数枚方向を変えて積層して樹脂で固めたコーンは強度を最大に出来ますがコストは高く高級品です。
更に、ハニカム構造にしたものも有ってたわみなどの防止に優れたウーハーです。ダイヤトーン製です。
・金属コーンは共振が問題ですが、ダンプ剤を塗布したり、駆動点を中心からずらしたり、ネットワーク回路で共振周波数を減衰させたりして、高強度でハッキリした音質を活かしている物が多いです。
中でも、マグネシウムMgやその合金を使った物は材質特性により共振も少なく軽量で理想のコーンに成っています。(Fostex等)
・平面型、コーン形状を平面にした、ハニカム平板型等のスピーカーはコーンの凹みの影響による中音域のレベル低下や中音や高音用のスピーカーとの聴取時間距離が異なることによるf特性の凸凹等を解消する為に全てのユニットの振動板を平面化して位相を同じくしたものです。
音響伝送としては理想形です。しかし、コストが高いため廃れてしまいました。

N.Yasuda

コメントはショップにて承認後、公開されます。