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こんにちは、FunLogyのぐりです。前回 スピーカーの構造 についてお話しさせていただきました。
しかしスピーカーの構造について知っていても、そのスペックについて詳しく説明するのは難しいのではないでしょうか。

今回の記事では、スピーカーの機能を決定づける3つの要素についてご紹介いたします。
スピーカー購入の際にとても役に立つと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。


出力W数=スピーカーの音の大きさを決める

メガホンを構える人

スピーカーの能力を決める1つ目の要素は【出力W数】です。一般に販売されているスピーカーのスペックシートには、必ず記載されています。

Wとは電力の大きさの単位で、基本的に大きな電力をかけると大きな音を出すことができます。
スピーカーにおけるW数表記は、音源から入力できる電力の大きさの上限を表している、という点に注意しましょう。

例えばスピーカーの出力W数が100Wだとしても、アンプからの出力が50Wしかなければ50Wの音量しか出せません。どんな音源を再生したとしても、入力したW数以上の大きさの音を出すことはできません。

自宅で音楽を楽しむ場合の出力W数


それでは、一般的な自宅の一室で音楽を楽しむ場合に必要となる出力W数はどれくらいでしょうか。

リビングでリラックスしながら聴くことを想定すると、20〜30Wほどの出力W数が目安になります。
ただし、出力が100W以上のスピーカーでは、小さな音から大きな音まで表現できるという特徴が出てきます。この特徴はクラシック音楽など、様々な楽器が同時に鳴る音楽を聴くのに適しています。

 

スピーカーのW数の計算式


スピーカーの出力W数はどのようにして計算されているでしょうか。それには、スピーカーの「インピーダンス」と呼ばれるものと、スピーカーに加わる電圧が関係しています。以下のような式で表されます。

 

W(電力)= Ⅴ(電圧)× I(電流)

=   Ⅴ(電圧)×( V(電流)/ Ω(インピーダンス))

 

インピーダンスとは電気回路における電流の流れにくさを表すもので、Ωという単位で表されます。例えばインピーダンスが5Ωで、電圧が2Vの場合、0.8Wの出力になります。ここからインピーダンスが4Ωで同じ電圧の2Vを流した場合には、1Wの出力になり1.25倍になることがわかります。

このため、同じ電圧の場合、インピーダンスが少ないほうが出力が大きいスピーカーになります。

 

出力の大きいアンプにスピーカーを繋ぐ場合の注意点


スピーカーをアンプと接続する場合は、スピーカーの出力W数とアンプの出力W数のバランスを取ることが重要です。
特に小さいスピーカーに出力の大きなアンプを繋いだ場合には、過剰に高い電圧が加わってしまいスピーカーが故障する恐れがあります。

安全性を考慮すると、スピーカーとアンプの出力W数は同じか、アンプのほうがやや少ない組み合わせで選択するのがベストでしょう。



周波数帯域=スピーカーの音域の広さを表す

色のブロックが並んでいる様子

スピーカーの能力を決める2つ目の要素は【周波数帯域】です。
周波数とは1秒間に音の波が上下する回数のことで、その回数により、私たちの耳は低周波数から高周波数の音を聴き分けることができます。

簡単にいうと、低周波数は低い音、高周波数は高い音に聞こえます。単位はHzで表され、

  • 100Hz以下:低音域(ベースやバスドラム)
  • 150〜1,000Hz:中音域(ピアノやギター、ボーカル)
  • 1,000Hz以上:高音域(シンバルやフルート)


とイメージしてみると分かりやすくなります。

スピーカーの周波数帯域


このような周波数のうち、スピーカーが再生可能な帯域を表したものが、スピーカーのスペックに表示されている再生周波数帯域です。

これはスピーカーが、「どこまで低い低音が出せるか、どこまで高い高音が出せるか」というものを表したものです。つまり、スピーカーの性能に表記されている帯域外の音を再生することはできないことになります。
特に低音をどこまで出せるかで、スピーカーの価格は変動します。一般的には、より低い低音を出せるスピーカーが高価になりやすい傾向にあります。

それではダンスミュージックなどの低音を楽しむためには、高価なスピーカーを買うしかないのでしょうか?
実はスピーカーで再生する際に、ちょっとした一手間をかけることで、今のスピーカーでもより効果的に狙った周波数帯域を強調することができるようになります。

それがEQ(イコライザー)です。

 

EQ(イコライザー)とは?

イコライザーのスイッチ

スピーカーの特性をサポートするのがEQ(イコライザー)です。
EQ(イコライザー)とは、決められた周波数帯の音量を調整する機能のことです。オーディオ機器をはじめ、多くの楽器や録音機器に使用されています。

 

EQの使い方


EQの使い方としては、中音域を強調してそれ以外の音域を下げることでボーカルの声を引き立たせたり、音量が出せない環境で低音を強調し、ダンスミュージックなどのリズム感の強い音楽を楽しんだりといった方法があります。

よくあるEQの設定としては以下のようなものが挙げられます。自分の好きなジャンルに合わせてEQを設定するのが良いでしょう。

 

1.フラット型

フラット型はEQをかけていない普通の状態、もしくは、少し高音を下げた設定です。シンプルな設定ながら、ミュージシャンが作った音本来の音を感じることのできるものです。
また、後述する設定との違いを知るための基準としてフラット型の設定を耳に覚えておくことは重要になります。

2.ドンシャリ型

ドンシャリ型は低音域と高音域を少し上げて、中音域を下げた設定で、ドラムやリードの楽器が目立つようになります。
低音の「ドン」と、高音の「シャリ」という音を合わせた用語で、ロックやジャズなどの音楽に適しており、アメリカ音楽はこの設定に合うようにミックスされているものが多くあります。

3.かまぼこ型

かまぼこ型は、ドンシャリ型とは反対に低音域と高音域を下げることで、ボーカルの音や弦楽器などを目立たせる調整です。
かまぼこ型の名前の由来は、このEQ設定を周波数帯域のグラフで見ると、かまぼこのような形に見えることから来ています。

4.パーフェクト

「完璧」と呼ばれるこの設定は、iTunesなどのプリセットでよく見られます。
どんなジャンルでも合う設定という評判の良さからパーフェクトと呼ばれ、アメリカの音楽を席巻したEQです。また高音域の4,000Hz周辺を少し下げた「Eargasm Explosion」という設定も流行しており、時代に合わせてEQの設定は変わっていくことを感じられます。


しかし、どの設定を行う場合でも気をつけなければならないのが、スピーカーの周波数帯域能力を超えて再生することはできないという点です。EQができるのは、今再生されている音を強調したり、弱めたりすることだけです。



dB=スピーカーの音の大きさと能率を決める


スピーカーの能力を決める3つ目の要素は【dB】です。
dBとは音の大きさを表しています。Wとの違いは、Wが電力の大きさを示しているのに対して、dBはその電力を変換した音の大きさを表しているという部分です。

dB数と音の大きさは対数の関係で表されています。
説明すると複雑になるので「dB数が2倍になっても感じる音の大きさは2倍ではない」とだけ覚えていただければと思います。

例えば20dBが40dBになると、音の大きさは10倍に感じます。またこのdBは、スピーカーの能率の高さを表すとも言われます。

スピーカーの能率とは


スピーカーの能率という言葉が表すものはメーカーにより多少の差異がありますが、一般的には以下のように定義できます。

【1Wの信号をアンプからスピーカーへ入力したときに、1m離れた場所で聞き取れる音量】

つまり能率100dBのスピーカーに1Wの電力を入力すると、1m先で100dBの音量を聞くことができるということです。dB値が高いと能率が高いとされ、少ないW数で必要な音量を出力することができます。

例えば能率が100dBのスピーカーから120dBの音を出そうとした場合には、100Wの出力が必要になりますが、能率97dBのスピーカーから同じ120dBの音を出す場合には、さらに大きい200Wの出力が必要となります。たった3dB違うだけで、必要な出力が2倍も違ってきます。

能率が低いと、大きな出力(電力)がないと大きな音を出すことができません。

市販されるスピーカーの能率


それでは市販されるスピーカーの能率はどのくらいが相場なのでしょうか。
平均的に80dBなら低く、100dBを超えていれば高いとされています。しかし、近年の市場に出回るスピーカーは能率の低いモデルが多くなっているようです。

理由としては、

  • 能率を下げると周波数特性を広くできる=より低音を出すことができる
  • スピーカー本体のサイズをコンパクトにできる


という点が挙げられます。

 

市販のスピーカー能率が低い理由


なぜスピーカーの能率を下げると周波数特性が広がり、スピーカー本体のサイズをコンパクトにできるのでしょうか。

まず周波数特性についてです。
能率の高さと周波数特性には関連性があり、一般的に能率が低くなればなるほど低い周波数の音を出すことができるようになります。

よりわかりやすくするために、グラフを用いて説明いたします。

能率と周波数特性の関係を表したグラフ

上のグラフはあるスピーカーの能率と周波数の関係を表したものです。縦軸が能率(dB数)、横軸が周波数の大きさ(Hz)を表したものです。まず、100Hz以降の中高域は能率を下げなくても再生することができます。

仮にこのスピーカーの能率が100dBであったならば、周波数特性は100Hzまで対応できるということです。厳密には周波数は波の形を持っていますので、能率-3dB程度の周波数特性までは使用することができます。
このスピーカーが97dBの能率で再生できるのは80Hz程度だとすれば、能率100dBで出せる周波数特性はおよそ80Hzまでということです。

ところが、ここでスピーカーの能率を90dBまで下げると、80Hzまでしか再生できなかった特性が70Hzほどまで下げられました。つまり、能率を下げるだけで、低音に対応することができるのです。

次にスピーカー本体をコンパクトにできるという点です。
能率を下げないでより低音を出すためには、

  • 筐体(本体)の大きさを大きくする
  • 本体に別の低能率のスピーカー(サブウーファー)を取り付ける


必要があります。どちらにせよ本体は大きくなってしまいます。

能率を下げるだけでスピーカー本体にサブウーファーを搭載する必要がなくなり、スピーカー本体のサイズも小さいままで済むというわけです。
コンパクトなスピーカーは人気を博しており、今後も能率を下げることで低音を表現するモデルは多くなる可能性が高いです。


いかがでしたか?スピーカーを選ぶ上で見るべき性能について紹介いたしました。3つの要素の基準を自分の中であらかじめ決めておき、自分の部屋などスピーカーを使用するシーンに合ったものを選択しましょう!


FunLogy
鈴木

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▼次回

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