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こんにちは、『金曜ホームシアター』、ライターのカナです。このコラムでは私が独断と偏見で選んだ映画や皆様におすすめしていただいた映画を、FunLogyの製品と共に鑑賞、ゆるくレポートしていきます。
第2回の映画は『THE 有頂天ホテル』。三谷幸喜監督作の、有名ホテルを舞台にしたコメディ群像劇ですね。これはぜひ家族と一緒に笑いながら鑑賞したい!ということで、今回はこちらのプロジェクターを使用しています。
使用した機器についてはこちら。
それでは、さっそく鑑賞の感想にいってみたいと思います。
第2回:『THE 有頂天ホテル』
そもそも『THE 有頂天ホテル』とは?
芸能人や政治家も利用する有名ホテル「ホテルアバンティ」を舞台に、大晦日の夜の騒動を描いた三谷幸喜監督のコメディ映画。
迷路のようなホテルで繰り広げられる多彩な人間模様を、ギャグあり、ロマンスあり、ドラマありの何でもありで描く。主演は役所広司。公開は2006年。
はじめに
『THE 有頂天ホテル』を一言でいうなら?
「今が幸せだと思っている人にも、不幸せだと思っている人にも等しく薦めたい映画」です。理由は総括で後述します。
『THE 有頂天ホテル』感想―序盤
まずこの映画に序盤とか中盤とか区切れるものなのだろうか? と疑問ですが、序盤としてはおおよその主要人物が出揃い、それぞれの抱える問題や巻き込まれる問題が見えてくるあたりまで、かと思います。
物語は大晦日の夜からスタートしますが、「マン・オブ・ザ・イヤー」授賞式&カウントダウンパーティーという2つの大きなパーティーを控えたホテルには、ざっと見渡してもこれだけの人々が。
【従業員サイド】
・カウントダウンに浮かれる能天気な総支配人
・総支配人に媚を売る副支配人
・生真面目で人望の厚い副支配人(新堂)
・新堂を支える女性マネージャー
・音楽活動に限界を感じ、今日でやめるベルボーイ
・かつて政治家の愛人だった客室係(上の画像がそうです)
・ケンカ中のウェイターと客室係
・寡黙な筆耕係 ……などなど
【宿泊客・ゲストサイド】
・記者に追われている悪徳政治家
・「マン・オブ・ザ・イヤー」受賞者の偉い先生(上の画像がそうです)
・その先生の現妻であり新堂の元妻の女性
・神出鬼没のコールガール
・謎のフライトアテンダント
・大御所歌手
・カウントダウンパーティーの出演者とアヒル(cv.山寺宏一)
・ホテル探偵 ……などなど
何やらあちこちで騒動の気配が。人望厚く有能でトラブルとは無縁に思われる副支配人・新堂が、それらの騒動に巻き込まれていく……ホテルアバンティは無事に新年を迎えられるのか!? というストーリーですね。
本作は群像劇のためすべての登場人物に見どころがありますが、主役はこの新堂さんになります。演じているのは役所広司さん。
余談ですが私は人の顔を覚えるのが本当に苦手で、俳優さんは特に、役柄によって風貌が変わってしまうのでまったく分からないんですね。
そんな中、なぜか唯一分かる俳優さん、それが役所広司さんです。物心ついた頃から役所広司さんしか分かりません。なので画面の中で見かけると、旅先で突然同郷の方に遭遇したかのような得も言われぬ安心感を覚えますね。
『THE 有頂天ホテル』はとにかく開始直後の情報量が多い!1回目に観たときは、オープニング早々かわるがわる色々な登場人物が出てくる勢いに圧倒されてしまいました。でも、あまり心配せず鑑賞して大丈夫です。
なぜなら、すべての登場人物に濃すぎるくらいの個性が詰め込まれているから。1回目の登場ですべての人を覚えられなくても、2回目、3回目と登場するうちに、自然と立ち位置や人間関係、性格といったものが頭に入ってくるんですね。
序盤の終わり頃に、従業員の仲間たちから「欲がない」と言われる新堂さん。確かに同じ副支配人の瀬尾さんを見ると、分かりやすく欲だらけですからね。
このとき新堂さんが返した、ちょっとした欲――この映画ではそれを夢といってもいいように思います――を頭の片隅に残しておくことをぜひおすすめしたいです。
彼がトラブルに巻き込まれる前に語った、笑われてしまうくらいささやかな夢。
エンディングでそれを思い出すシーンに、思わぬ形で出会いました。
『THE 有頂天ホテル』感想―中盤
中盤はなんと言っても鹿……、もう鹿としか申し上げられないのですが、鹿ですよね。新堂さんが見栄という欲を張り、騒動に巻き込まれる側から、騒動を巻き起こす一員になっていった。そういうシーンでもあります。
この辺りは「何を語ってもネタバレになる」と「ネタバレをしても何を言っているのか分からないと思う」という、相反する2つの気持ちが同居してしまうのですが。
でも真面目に分類するなら、序盤で無関係にしか思えなかった様々な騒動が繋がって、本来繋がるはずのなかった人たちが繋がって、解決の糸口の見えなかった騒動がひとつまたひとつと解決の兆しを見せていく。その辺りまでだと思います。
『THE 有頂天ホテル』はあらゆるシーンで、この「繋がるはずのなかった人たちが繋がる」奇跡を描いているような気がしました。
ヨーコと武藤田、ハナとなおみの関係が、その中でも最たる奇跡のように思いましたが。
そう思って見返してみたら、この映画のキャッチコピーは
「最悪の大晦日は、最高の奇跡の始まりだった。」
なんですね。本当にその通りで、奇跡がドミノ倒しのように続いていきます!その一つひとつに、面白おかしくもどこか切ない背景があるのを知っていると、登場人物一人ひとりに差し始めた光が本当に眩しくて、なんだかホロリときそうになってしまうんですよね。
まあ、ちょうどホロリと来そうになったところで、総支配人やダブダブといった忘れかけていた存在が出てくるので、すべてを持っていかれるのですが。
素直に泣かせてくれないあたりが、そうだこれは三谷監督の映画だった、と思い出させてくれます。いい意味で。
「迷路のような」ホテル
そんな中盤の終わり頃、ある人が「出たー!」と叫びをあげるシーンがあります。私はこれを聞いたときに、『THE 有頂天ホテル』の全貌を見たような気がしました。
この「ホテル・アバンティ」は迷路のよう。従業員でさえ時々迷ってしまう。序盤でそういう説明がされるシーンがあります。
このときはまだ、ホテルに集まった人々の抱える問題は明らかになっていません。お客様をなごませるジョークのようなさりげない台詞なのですが、ここが迷路であるということ、そして迷路はいつか「出る」ものだということ。それが『THE 有頂天ホテル』のテーマだったりしないかな? と思います。
迷路のようなホテルの中で、思い思いに迷い、こじれていた人々が、この中盤で一気に出口へ向かって駆け出すんですよね。
あの「出たー!」は、そんな全員の心の叫びの象徴なのかな、と思いました。
もっとも、当人は「出た」瞬間よりも、その後のあるモノを破壊した瞬間のほうが、遥かに生き返ったような叫びをあげていましたが……(一番好きなシーンです)
『THE 有頂天ホテル』感想―終盤
終盤はいよいよ迎えたパーティーのシーン。このパーティーがどの程度、無事に開催されたのか?
それは言ってしまったらつまらないと思いますので控えますが、代わりに言うとすれば、YOUさんの歌が最高です。YOUさんの歌が流れだした瞬間に、キャッチコピー通りの「奇跡」を感じました。
この映画の楽しいところは、オープニング時点での時間の設定が「新年まであと2時間」というところですよね。つまりパーティーまで約2時間、映画を観てきた私たちは、ホテルアバンティの人々とまったく同じ時間を過ごしていたというわけです。
なんと人騒がせで忙しい2時間なんでしょう! 現実には絶対に対処できない、けれどそんな出来事の数々が、現実と同じ2時間という制限の中で描かれている。このありえないはずのリアリティが、ホテルアバンティを日本のどこかにあるかのように思わせてくれる。そんな映画でした。
今回のおやつ
総括
コメディというとなんとなく「笑いたい気分のときじゃないと面白く観られない」という方も多いのではないでしょうか。それは一理あると思います。どん底の気持ちは、簡単に笑いを受け入れてはくれないですよね。
でも、どん底までじゃない。けど、ハッピーでもない。そんなふうに「ちょっと不幸」を感じている方は、よかったら一度、『THE 有頂天ホテル』を観てほしいです。この映画には、面白おかしい人だけではない、夢と現実の間でもがいている人や、自分を主張できなくてどうしたらいいか分からなくなっている人、何かを諦めかけている人などがたくさん出てきます。
ずっと面白おかしいのは総支配人だけかもしれないですね。だから好きになってしまうんですけど……
これはまったく関係ないですが新堂さんのベストオブ可愛いシーンです。
おわりに
ホラーにはめっぽう弱いので、ホラー以外でお願いします。血もちょっと控えめのほうが。
鑑賞は先着順ではなく気になったものから、なおかつAmazonプライムビデオで観られそうなものが優先になると思いますが、配信では出会えない名作のおすすめもお待ちしております!
それでは、次回もどうぞよろしくお願いします。
今日は、もっとたのしくできる。
FunLogy カナ
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